さて前回記事で、新型コロナウィルス感染症の中医学的病機は、季節外れの「湿」と記載しました。

「湿」が病を作るのは、外的要因の「外湿」と、人の内的要因の「内湿」があります。

 外湿の影響を最も受けやすいのは、もともと内湿が甚だしい人です。

 分かりやすい例え、普段から体温が低い人は寒さで病気になりやすいですよね。普段から暑がる人は高温環境に耐えられないですよね。
 それと同じ事で、普段から体内に「湿」を溜め込んでいる人は、外湿に影響されやすいです。

 湿を溜めている人はどういう人か。

 浮腫んでいる人!、、分かりやすいですね。
 確かにそうですが、それだけではありません。
 内湿をよく痰湿とも呼ぶが、主に脾胃(消化機能をさす、西洋医学の脾臓は関係ありません)の機能低下の結果、副産物として作られたドロドロベタベタのゴミのイメージです。
 味の濃い脂っ気が強いものや、甘いものは、中医学的には、脾胃に負担がかかりやすく、痰湿を作りやすいです。
 作られた痰湿が血に溜まり、西洋医学でいわゆる脂質異常症や糖尿病になります。内臓に溜まればいわゆる内臓脂肪、脂肪肝になります。皮下に溜まれば贅肉になります。どこかに集結していれば痰核とよばれ所謂腫瘤になります。肺や鼻に現れれば痰や鼻汁です。舌に溜まれば、中医師が臨床で重要視する胖大舌の所見となります。

↓胖大舌2例
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↓正常舌1例

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 上のように正常舌と比べ、胖大舌は腫れぼったく、口の幅いっぱいにあふれています。そして、程度が甚だしいと、上の写真のように、歯の圧迫の痕が舌辺縁についています。このような胖大舌を呈している人は、実は日常診療で非常に多く出くわします。現代の食事はリッチすぎるんでしょうか。

 ここでまず、外湿の影響を受けやすい人①内湿が重い人
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 ↑こんな体型の人は大抵内湿が甚だしいです。舌を見なくても分かります。
 肥満体型ではない人でも当然内湿が過剰な人はいます。舌所見や脈所見で総合判断します。
 私の経験上、中高年者は内湿が過剰のことが非常に多いです。
 ただし子供はぽちゃぽちゃしてても通常湿がたまっていると判断しません。子供は中医学的に湿はたまりにくいです。よほどジャンクフードやアイスクリームやこってり洋食ばかりで、冷えたジュースが大好きな現代っ子なら話は別です。

 新型コロナウィルス感染症で重症になりやすいのは中高年で、子供は軽症が多いというのは、中医学的に内湿の体質差でも説明できます。



 さて、
外からの湿気を排出できない人もまた要注意です。

 どういう人でしょうか。

 想像してみてください。湿気を飛ばすのは何でしょうか。

 です。

「熱」に欠ける、すなわち、体温が低めで活動性が低い人、中医学用語でいう陽気が足りない=陽虚の人は、外湿の影響を受けやすいです。よって、内湿はそこまででもないが痩せて低体温な高齢者も、今回の新型コロナウィルス感染で重症化しやすいです。子供は陽気旺盛(動き回っていますよね!)ですので、この観点からも子供は重症化しにくいです。

 ここで、外湿の影響を受けやすい人②陽虚の人
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 湿を散らす「風」がない、すなわち、風通しの悪いところにいる人も要注意です。
 今回の新型コロナウィルス感染は密閉空間でのエアロゾル感染もあると言われていますが、中医学的には風通しの悪い密閉空間は湿邪が猛威をふるいやすい環境にです。
 ちなみに2003年のSARSも湿邪でしたが、その時も医療者を始め密閉空間で働く人が大量に罹患しました。不思議な事に、タクシー運転手は全然かからなかったと言われています。中国に行った事のある方ならご存知ですが、中国のタクシー運転手は窓を開けているのが大好きです(笑)

ここで、外湿の影響を受けやすい人③閉鎖空間にいる人

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 以上、外湿に影響されやすい、すなわち新型コロナウィルス感染症で重症化しやすい人を中医学的視点で解説しました。

 ひとまず生活で注意する事は、

1、食事は、湿となりやすい脂っこい食事や、甘い味を避ける。湿気を飛ばす辛味のもの、芳香のものやスパイスを摂る(次の記事で語ります)

2、冷えた飲食を避ける(脾胃機能は冷たいもので障害されます)

3、陽気を補う。やり方はたくさんあります。まず天気の良い日は太陽に当たること、とりわけ背中は人の陽側なので太陽に当てておくこと。適度な運動も陽気を上昇させるが、大量に汗かくことは陽気を損じる。生姜、ネギ、ニンニクなど陽気を補う食物を摂る。などなど。

もちろん大前提は感染対策と
過剰な七情六欲がないよう、心情を
「恬淡虚無  真気従之」に保つことですね。
とても簡単に説明すると、自身を受け入れ、他者からの締め付けもなく、本来の自分でいるゆったりした心情のことです。中医学的養生の核心であり、難しいですYo〜

 逸れました
 以上外湿に影響されやすい体質を書きました。ではこの外湿に対し生活の中でどう予防するのがいいか、現場で予防の中医薬はどういう風に使われているか、次回の記事で書きます。