中医太美

中国瀋陽市出身 名古屋大学医学部医学科卒業 安城更生病院 神経内科 現在出産後より安城市で町医者をしています 数年前より中医学に魅了され、中国の中医師の本を翻訳してブログで伝えていこうと思います

 中医学的予防は食事のみならず、中薬、針、灸、推拿、気功など様々な方向から予防法が提案できます。
今日は中薬の予防戦略(治療戦略ではありません!)、専門家が勧める方剤、そして予防に生かせる日本の漢方(エキス剤)ついて書きます。

 もちろん大前提ですが、人の体質はそれぞれ違います。予防戦略も厳密にいうと人によって違います。中医学では、「中庸」を目指します。とても簡単に例えれば、冷え体質の人には暖める、熱がこもる体質の人は冷やす、湿っている人は乾かす、乾いている人は潤す、というようにベストバランスを目指す方法は人によって異なります。
 これから提案するのは、多数の方に適応できるであろう予防の処方です。

 食事編では、新型コロナウィルス感染症の中医学的特徴は「湿邪」と書きました。なので罹患しやすい人のベースの体質として「痰湿体質」「陽虚体質」の傾向があるはずと書きました。欧米で新型コロナウィルス感染症が爆発し、死亡率もアジアより高く、罹患層は若年にまで広がっている理由として、中医学的推測では、やはり欧米の食生活はアジアよりカロリーが高く、「痰湿体質」の人が多いからとも考えられます。マクドナルドを食べ、冷えたソフトドリンクを大量にのむ生活の人は痰湿体質になるのが当然です。

 「痰湿体質」を是正する薬で予防、と考えたくなりますが、実は痰湿とは、体にまとわりついたベトベトねちゃねちゃなので、短期間でとれるものではありません。
 その代わり、短期間で補えるのは「気」です
 人の中に「気」は4種類あります。衛気、営気、宗気、原気です。感染症対策では、まず「衛気」を固めることから始めます。
 「衛気」とは、人の表面を漂う気で、外敵から体を守り、そして毛穴を開閉し汗や体温を調節をする機能を持ちます。目が覚めている時は体表を漂うが、入眠すると人体の中に入り込む性質があります。人は起きている時間は薄着でよくても、睡眠時に同じ格好でいると邪気が侵入し病気になりやすいです。寝るときは衛気が守ってくれないので掛け物をします。
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 この衛気が弱い、または体内の営気と連合がとれない場合は、暑くもないのにちょっとしたことで汗が出ます。自汗が止まらない人はよくいます。代謝がいいわけではなく、衛気が正常に働いていない兆候です。もちろん病気になりやすいです。国境の守備が弱いと、敵も侵入しやすいし自国の資源や民も他国に逃げやすい、そんな状態です

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  感染症に対する中医学的予防戦略は、まずこの衛気を固める、強くすることが手っ取り早いと考えられます。特に普段から「気虚(気が弱くなっている)」の兆候がある人(顔に艶がなく蒼白または黄色、四肢に力が入らない、元気がない、眠い、脈が虚軟、自汗あり)の人は気を補う必要があります。ここで、中国の多くの有名中医師がすすめる気を補う方剤が、「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」です。中国では昔から広く使われている薬です。日本では保険適応はありませんが、一般用医薬品としてドラッグストアやアマゾンで買えます
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玉(のように素晴らしい)屏風(びょうぶ)ができるという意味のネーミングで、益気固表(気を補い体の表面を固める)の古来より多くの中医師に愛用された名薬です。組成は、黄芪(おうぎ)白朮(びゃくじゅつ)防風(ぼうふう)の三種類で、黄芪が大きな屏風の役目で(補気、固表、止汗)、白朮は健脾祛湿(消化機能を元気にし湿気をとる)で気の生成を促し、防風で侵入してきそうな邪気を駆除する役割です。戦に似ていて、大きな城壁を立て、その中で生産を促し、そして城壁には衛兵を配置し侵入する敵を駆除する、という具合です。
 ただし、この三味の生薬はすべて体を乾かす傾向のものなので、「陰虚」(液体成分の血・体液などが不足し、消耗、乾燥状態になること)の人は玉屏風散だけで予防してはいけません。陰虚の兆候として、平素より口渇、乾いた咳、時々火照り、自汗があり、たいていの人は舌は赤く苔が少ないです。この場合「陰」を補いつつ玉屏風散を使用する必要があり、その場合は「生脈散」と併用するとよいです。生脈散も日本では保険処方できないが一般用医薬品で発売されているのでAmazonや薬局で入手できます。




 
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 気虚、陰虚がみとめられる人であれば、上記処方を生薬で保険調剤でお出しできます。都築医院を含め、生薬を出せるクリニックで出してもらってください。
ちなみに玉屏風散を飲みやすい煎じ薬にしてもらいました
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日本で保険調剤できるエキス剤で対応したい場合、玉屏風散の代わりに「補中益気湯」
,、普段から風邪引きやすく、白い痰が出やすく、舌苔が白くて厚い人痰湿体質の方は「参蘇飲」陰虚の兆候もある人は「十全大補湯」、普段からちょっとしたことで胃腸トラブルを生じやすい人は「小建中湯」「黄耆建中湯」よいと思います。

 
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 また、普段より脂っこい食べ物が好きで、舌苔が黄色で厚い濕熱体質の人の予防では「藿香正気散」(かっこうせいきさん)が中国でよく使われています。こちらも薬局で一般用医薬品として売られています。

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(こちらの薬価収載のエキス顆粒で代用なら「平胃散」「胃苓湯」が考慮されます)
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 最後に、「湿邪」を飛ばすのに最高なのは「陽気」です。陽気を補う最高な方法は、自然界最大の陽気=太陽にあたることです。人間の陽の面は背中です。つまり背中を太陽に向けてひなたぼっこするのは、予防行為の一つにもなるわけです。ぽかぽかの太陽、きもちいいですよね。
ではまた。





ここIMG_5448


中国政府が派遣した中医チームが作成した
COVID19治療のための方剤(☆予防の方剤ではないですよ)

清肺排毒湯
(適用範囲:軽症、通常型、重症、重篤の患者には状況に合わせて使用)
基本方剤:麻黄9g 炙甘草6g 杏仁9g 生石膏15~30g(先に煎じる) 桂枝9g 沢瀉9g 猪苓9g 白朮9g 茯苓15g 柴胡16g 黄芩6g 姜半夏9g 生姜9g 紫苑9g 冬花9g 射干9g 細辛6g 山薬12g 枳実6g 陳皮6g 藿香9g)

日本でも作れます

実は、有事に備え2週前に6日分入手しました

名古屋鶴舞の明昭堂に調剤をお願いしうちに郵送してもらいました。


保険適応の生薬がほとんどで、これを処方し、
保険外の射干(やかん)と款冬花(かんとうか)は自費購入して自宅で煎じる時は一緒に投入します。(混合診療じゃん!ってつまらないツッコミしないでください。個人で買って投入しているだけです)

保険外の薬と郵送代も含め、全部で4800円ぐらいです。

射干や款冬花は普段あまり頻用しない薬剤なのに、明昭堂は気前よく翌日入荷してくれました。感謝です。

情熱、ですね。いつもここの漢方愛を感じます。

ちなみに4月1日より、都築医院の門前に、この明昭堂と同じ母体の草漢堂が調剤薬局としてきます。

煎じ薬はもちろん、丸薬、外用薬なども一緒に作っていけそうで、心強いです。

栄養士さん2人も雇っていただいて、今後都築医院での栄養指導、生活指導も充実していけそうです。西洋医学的な観点と、中医学的観点の両方から患者さんにアプローチできれば良いと思います。

(例えば、西洋医学的栄養指導では、腎障害以外の高血圧患者にK摂取をすすめ野菜果物の摂取を勧めており、基本的にそれを推奨しますが、ただし中医学的に生野菜や果物はおおよそ寒性なので、腎障害のない高血圧症でも陽虚の患者には勧められません。陽虚じゃなくても季節外れの野菜や果物は勧められません。
糖尿病患者さんでは、西洋医学的には炭水化物を食事の60%以下に抑えるよう勧めており、基本的にそれを推奨しますが、ただ中医学では同じ炭水化物でも五穀と野菜の炭水化物の性質は大きく異なり、五穀の摂取量は抑えてはいけないと考えてます、etc)

話逸れましたが、清肺排毒湯は日本でも作れます
薬局さんが頑張ってくれれば

先生方は迷ったら明昭堂 草漢堂に言ってください。全て揃えられます。
処方箋と住所などFAX後、処方箋を薬局に郵送、
後は生薬が着払いで届くだけです。
あ、患者が個人で薬局から射干と冬花を自費で買わなきゃいけません。これも連絡すれば一緒に郵送してくれます。

  今回の新型コロナウィルス感染症は「湿邪」であると前回ふたつの記事で書きました。
 湿邪に対処する予防の生薬はありますが、それはまた次回著名の先生の記事を翻訳します。

 ほとんどの皆さんは、生薬ではなく食事でできる対策を求めています。それを著名の中医師 徐文兵先生の著書を参考にしてまとめました。今の日々の食事の選択の中で少し取り入れていただけると幸いです。
 
 食事の対策も「湿邪」「寒湿」の対策でよいと考えます。
 今年は日本も武漢と同じく暖冬であり、そして雨の日も続いています。気温が比較的高いと湿度もあがり、そして暖冬といえど季節は初春であり寒いです。日本も今は湿邪 寒湿が問題になっていると思います。


 あと、おすすめ食材を語る前に、まず大前提です!
 中医学は、「○○をする」以上に、「○○をしない」ことを大事と考えます。
 前回記事でも書いたように、脂っこいものと甘い味のものは内湿を増強させるので、今は控えた方がよいです。

 「魚生火、肉生痰」という言葉があります。
 中医学の言う「痰」は所謂肺から出てくるアレだけではなく、「湿」の中の一種であり、粘っこく除去しにくい「湿」です。
 内湿を増長させないために、肉類を控えた方がいいです。ただし、後述しますが、発酵処理した肉なら問題はすくないです。
 また、餅のような粘っこく甘いもの(砂糖いれなくても餅米は中医学的に甘味と分類されます)は痰湿を増長させる食べ物として名高いです。
 そして甘い味全般的に痰湿を生みやすいです。アイスクリームなどは論外です。例えば、健康目的でデーツ(ナツメヤシ)を食べている人が多いですが、これも甘味であり内湿がある人は注意すべき食べ物です。
 肉も餅米も甘味も、それぞれの効能もあるので一概に避けるべきものではないですが、外湿が問題になる時期、または内湿が盛んな人は避けるべきです。
 
 さて、本題、「湿」防御のための食品編

 中国では南方の地域に古くから湿気が強い地域が多く、その食習慣にヒントがあります。

 まず、南方の人々は酸味と腐食(発酵品)を好んで食べます。

 酸味と発酵品は消化を助け、脾胃での痰湿生成を減らすことができます。発酵品はとりわけ優秀で、発酵の過程で食品がある程度分解され非常に消化しやすくなり、脾胃に負担をかけません。これはすなわち消化され、人にとって有用な「気 血 津液」となりやすく、廃棄物の痰湿を作りにくいということになります。

 実際南方の人々は古くから肉を発酵し、「腊肉(ベーコン)」「腌肉(漬肉)」「火腿(ハム)」にして摂取しています。


 ここまでは「湿」を作らない食品の話でした。


 次は「湿」を散らす食品編

 湖南省、湖北省、四川省、雲南省、貴州省など湿気が盛んかつ奥地ゆえに寒冷も共存する地域で古くから辛味が愛されています。

 辛味は、「寒」と「湿」をとるには最強です。

 インド人がカレーを愛するのも似た原因かもしれません。インド洋からの湿気はヒマラヤ山脈に遮られインド全土に降り注ぐので、カレーの辛味で体内の湿を排出しているかもしれません。

 生姜、葱、ニンニク、山椒、紫蘇、大根などは、寒湿対策の有力食材です。
 ちなみに辛くて嫌な人は、酸味を組み合わせてとると辛味は緩和されます。生ニンニクは胸やけするけど、ニンニクの酢漬け(らっきょ?)にすると緩和されますよね。

 辛味も度がすぎると脾胃(消化機能)を傷害させます。適度でお願いします。

 最後にとある南洋中医師が提案した、家の食材で作れる予防ジュースを紹介します。

 葱白(葱の白い部分)生姜 ニンニク 黒糖 
 量は適当です(笑)上記を水で煮込んみ(沸騰後2分程で可)、その汁を飲みます。
 黒糖は甘いですが、脾胃を保護する作用があるので今回は使います。
 作りたては辛くて不味いですが、常温に戻した後にうちの旦那さんに飲ませたら、
「あ、ジンジャーエールじゃん笑」という反応でした。
 上記の寒湿をとる趣旨のものとしては、良いかとおもいます。

 次回、予防の生薬処方について書きます。
 
 

さて前回記事で、新型コロナウィルス感染症の中医学的病機は、季節外れの「湿」と記載しました。

「湿」が病を作るのは、外的要因の「外湿」と、人の内的要因の「内湿」があります。

 外湿の影響を最も受けやすいのは、もともと内湿が甚だしい人です。

 分かりやすい例え、普段から体温が低い人は寒さで病気になりやすいですよね。普段から暑がる人は高温環境に耐えられないですよね。
 それと同じ事で、普段から体内に「湿」を溜め込んでいる人は、外湿に影響されやすいです。

 湿を溜めている人はどういう人か。

 浮腫んでいる人!、、分かりやすいですね。
 確かにそうですが、それだけではありません。
 内湿をよく痰湿とも呼ぶが、主に脾胃(消化機能をさす、西洋医学の脾臓は関係ありません)の機能低下の結果、副産物として作られたドロドロベタベタのゴミのイメージです。
 味の濃い脂っ気が強いものや、甘いものは、中医学的には、脾胃に負担がかかりやすく、痰湿を作りやすいです。
 作られた痰湿が血に溜まり、西洋医学でいわゆる脂質異常症や糖尿病になります。内臓に溜まればいわゆる内臓脂肪、脂肪肝になります。皮下に溜まれば贅肉になります。どこかに集結していれば痰核とよばれ所謂腫瘤になります。肺や鼻に現れれば痰や鼻汁です。舌に溜まれば、中医師が臨床で重要視する胖大舌の所見となります。

↓胖大舌2例
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↓正常舌1例

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 上のように正常舌と比べ、胖大舌は腫れぼったく、口の幅いっぱいにあふれています。そして、程度が甚だしいと、上の写真のように、歯の圧迫の痕が舌辺縁についています。このような胖大舌を呈している人は、実は日常診療で非常に多く出くわします。現代の食事はリッチすぎるんでしょうか。

 ここでまず、外湿の影響を受けやすい人①内湿が重い人
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 ↑こんな体型の人は大抵内湿が甚だしいです。舌を見なくても分かります。
 肥満体型ではない人でも当然内湿が過剰な人はいます。舌所見や脈所見で総合判断します。
 私の経験上、中高年者は内湿が過剰のことが非常に多いです。
 ただし子供はぽちゃぽちゃしてても通常湿がたまっていると判断しません。子供は中医学的に湿はたまりにくいです。よほどジャンクフードやアイスクリームやこってり洋食ばかりで、冷えたジュースが大好きな現代っ子なら話は別です。

 新型コロナウィルス感染症で重症になりやすいのは中高年で、子供は軽症が多いというのは、中医学的に内湿の体質差でも説明できます。



 さて、
外からの湿気を排出できない人もまた要注意です。

 どういう人でしょうか。

 想像してみてください。湿気を飛ばすのは何でしょうか。

 です。

「熱」に欠ける、すなわち、体温が低めで活動性が低い人、中医学用語でいう陽気が足りない=陽虚の人は、外湿の影響を受けやすいです。よって、内湿はそこまででもないが痩せて低体温な高齢者も、今回の新型コロナウィルス感染で重症化しやすいです。子供は陽気旺盛(動き回っていますよね!)ですので、この観点からも子供は重症化しにくいです。

 ここで、外湿の影響を受けやすい人②陽虚の人
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 湿を散らす「風」がない、すなわち、風通しの悪いところにいる人も要注意です。
 今回の新型コロナウィルス感染は密閉空間でのエアロゾル感染もあると言われていますが、中医学的には風通しの悪い密閉空間は湿邪が猛威をふるいやすい環境にです。
 ちなみに2003年のSARSも湿邪でしたが、その時も医療者を始め密閉空間で働く人が大量に罹患しました。不思議な事に、タクシー運転手は全然かからなかったと言われています。中国に行った事のある方ならご存知ですが、中国のタクシー運転手は窓を開けているのが大好きです(笑)

ここで、外湿の影響を受けやすい人③閉鎖空間にいる人

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 以上、外湿に影響されやすい、すなわち新型コロナウィルス感染症で重症化しやすい人を中医学的視点で解説しました。

 ひとまず生活で注意する事は、

1、食事は、湿となりやすい脂っこい食事や、甘い味を避ける。湿気を飛ばす辛味のもの、芳香のものやスパイスを摂る(次の記事で語ります)

2、冷えた飲食を避ける(脾胃機能は冷たいもので障害されます)

3、陽気を補う。やり方はたくさんあります。まず天気の良い日は太陽に当たること、とりわけ背中は人の陽側なので太陽に当てておくこと。適度な運動も陽気を上昇させるが、大量に汗かくことは陽気を損じる。生姜、ネギ、ニンニクなど陽気を補う食物を摂る。などなど。

もちろん大前提は感染対策と
過剰な七情六欲がないよう、心情を
「恬淡虚無  真気従之」に保つことですね。
とても簡単に説明すると、自身を受け入れ、他者からの締め付けもなく、本来の自分でいるゆったりした心情のことです。中医学的養生の核心であり、難しいですYo〜

 逸れました
 以上外湿に影響されやすい体質を書きました。ではこの外湿に対し生活の中でどう予防するのがいいか、現場で予防の中医薬はどういう風に使われているか、次回の記事で書きます。


今回の新型コロナウィルス感染症の中医学的病機を まとめてみました
参考:
「新華網 北京中医医院院長 劉清泉の武漢視察インタビュー」
 劉先生は中国政府が結成したCOVID-19対策中医チームのリーダーの一人で、中国政府が発表した治療方案を作成した一人です。
 上記を抜粋翻訳し、私なりの解説交えてお伝えします。病機から予防にも繋げられるのでご参考ください。
 漢方を勉強している先生方にも参考になるよう記載していますので、一般の方は難解な言い回しは読み飛ばしてください。


 多くの著名中医師が提言するように、上の記事でも病機が「湿邪」が中心と述べています。
 湿邪とは、外部からの疾病の原因の六淫(風 寒 暑 湿 燥 火または熱)の一つで、人体に影響する外部の湿気のことです。
 今年の武漢はそもそも暖冬の異常気象でした。例年冬になると雪が降るが、今年はシトシトと雨が長引きました(1月中は16日間も雨でした)。乾燥するはずの季節なのに、暖冬と長雨で過剰な湿気上昇が発生しました。
 「非其時而有其気」
 一年四季二十四節気七十二候、その時期に応じ寒熱は変わるが、時期に合った変化でなければ人は病気(特に感染症)を患いやすいとされる。例えば、春は温暖のはずなのに寒い、秋は涼しいはずなのに熱い、今回で言えば冬は寒いはずなのに暖かい、乾燥するはずなのに湿潤といった変化である

 さて湿とは、水気であり、陰の要素を含み、体内の陽気を障害します。烏雲が太陽を覆い被るように、混沌でスッキリしない状態をもたらします。体や頭が重く、目や口の中や鼻や喉が粘っこい感覚があります。静かに人に纏わりつき、停滞し、そしてなかなか除去しにくい特徴があります。中医師が最も手を焼くのがこの「湿邪」です。
 湿邪は寒気と共に体内に侵入すれば「寒湿」、風と共に侵入すれば「風湿」となります。もともと陽性体質であれば侵入してすぐに体内で熱化し「湿熱」になります。反対の燥邪と合わさる事もあり、「燥湿」証を呈することもあります。

劉清泉先生の武漢視察では、湿証の患者が中心だったと言います
以下抜粋翻訳

 現地の患者の多くは最初から高体温ではなく、無熱または微熱でした。38.5℃を初期から呈する人は少なかったです。殆どの人は倦怠感、頭重感、食思不振を呈し、一部では悪心、胸苦しい、心窩部違和感、水様便が認められました。殆どが咽頭部違和感を訴え、一部では乾性咳嗽がありました。この状態が5-7日持続し、この段階で治療すると殆どの人は回復期に移行していきます。急に39℃以上になった場合、患者の容体も急激に重症に入り、呼吸困難感と頻呼吸、SpO2低下、CT上広範の肺陰影を呈するようになります。
 患者の舌証は、白苔であれ黄苔であれ、厚膩苔(厚くてべっとりへばりついた苔)であるのが共通点でした。症状と舌証と脈証と武漢の異常気候と合わせ、今回は湿邪が中心と判断しました。

 各地の気候特徴によって特徴が異なってくるが、新型コロナウィルス感染症に通じる特徴としては「湿邪」です。おおよその経過は、
湿困脾閉肺(湿が脾の働きを止めた結果、肺の働きも止まり)
気機昇降失司(体内の「気」の昇降がコントロールを失い)
湿毒化熱(留まる湿毒が熱化し)
陽明腑実(胃腸に熱が及び)
湿毒瘀熱内閉(まとわりつく湿気が熱をさらに閉ざし、熱は外に出られなず)
熱深厥深(熱はさらに深くへと傷害していく)
が大まかな段階です。
 その人に合わせ、「寒湿」「湿熱」「燥湿」の治療をしていく事が大事です。
 早期では「化湿(湿を飛ばす)」治療が中心で、湿が熱化しないように防ぐ事が肝心です。上記より、麻杏薏甘湯、昇降散、逹原飲、厚朴夏苓湯、藿香正気散、銀ぎょう散などの方剤を基本方剤とし、基本的な中医学的治療法案を考案しました。状況に合わせ現場で微調節してください。

 現場中医師への注意:
 通常のインフルエンザや他の感染症にも「風熱挟湿」「熱毒挟湿」はあり、清熱解毒に袪湿法を使っていました。その場合、熱がなくなれば通常湿が速やかに消失していました。しかし今回はそれとは違い湿邪が非常に重いのが特徴です。早期より清熱解毒を優先してしまうと、寒涼な薬剤で湿邪を内部に閉じ込めてしまい増長させてしまいます。化湿法(芳香化浊避秽,透表散邪,升降脾胃)を中心とし、治療にあたるとよいと考えます。湿が消えれば熱も自然と散り、状態が改善すると考えます。
 患者様への提案:
 呼吸困難感や頻呼吸、SpO2低下がない、平熱でかつ基礎疾患(心臓や肺の慢性疾患、腎機能障害、免疫抑制状態など)がない場合であれば受診せず、怖がらず、家でよく休み、飲食に注意し(寒涼な飲食を避け、湿を作りやすい甘い味やコッテリ味を避ける)中薬(漢方薬)を内服してください。

以上抜粋翻訳
 次は、新型コロナウィルス感染症で重症化しやすい体質を中医学的観点から解説し
中医学的予防について記載します。

2/19中国が発表した新型コロナウィルス感染症 診療方案 第六版
第五版からの注目の変更点は
1,伝播経路について
経気道飛沫感染は変わらないが
「接触感染」から「密接接触」と記載を変更している。長時間密閉空間でのエアロゾル感染を追加している。
2、抗ウィルス薬について
第5版では「確実に有効と認められる抗ウィルス薬はない」と記載されていたが、第6版では抗マラリア薬のChloroquine Phosphate(成人500mg×2回/日 10日以内使用)と、抗インフルエンザウイルス剤のfavipiravir(成人200mg×3回 10日以内使用)が追加されている
Interferon alfa(500万U噴霧吸入 2回/日)
エイズ治療薬Lopinavir/ritonavir (LPV/r)(200mg/50mg/粒 2粒×2回/日 10日以内投与)
抗ウィルス薬Ribavirin 500mg/回 2-3回/日静注投与 10日以内使用(上記のInterferon alfa或いはLopinavir/ritonavir 併用を推奨)
ただし上記薬剤の3種類以上併用を薦めない 



3、中医治療
第五版から第六版へは非常に内容が充実し、中医学を多少かじった医師にも判断しやすいよう細かい指示が盛り込まれている
第六版治療編の7ページ中4ページ以上において中医学的対応を記載されているが、他国言語に適切に翻訳しにくいためか日本に情報がほとんどない。触れられてすらいない。
生薬処方は日本で保険適応であり(保険適応外の生薬は指示欄に別で記載すれば入れられる)生薬を保険調剤する薬局は実は各所にあるので活用していっていただければ幸いである。煎じ方は大方扱っている薬剤師に聞けばわかるはずである。
1医学観察期
臨床表現1 :倦怠感+胃腸症状(主に悪心や下痢を指すと思われる)
推薦処方:藿香正気散(散ではない丸薬でも水薬でも良い)こちらは第二類のみ日本でも売られている。
臨床表現2:倦怠感+発熱
推薦処方:金花清感顆粒 連花清瘟カプセル(顆粒) 疎風解毒カプセル(顆粒) 
上記は中国では一般の薬局で手に入りやすいが、日本ではなかなか手に入らない。個人的にはの本でも売られている銀ぎょう解毒散(第2類)でも代用可能と考えている。
2臨床治療期 以下は売られている散剤ではなく生薬になる
清肺排毒湯(適用範囲:軽症、通常型、重症、重篤の患者には状況に合わせて使用)
基本方剤:麻黄9g 炙甘草6g 杏仁9g 生石膏15~30g(先に煎じる) 桂枝9g 沢瀉9g 猪苓9g 白朮9g 茯苓15g 柴胡16g 黄芩6g 姜半夏9g 生姜9g 紫苑9g 冬花9g 射干9g 細辛6g 山薬12g 枳実6g 陳皮6g 藿香9g
上記が一日の分量 水で煎じ(通常600mlの水で弱火で300mlになるまで煎じる)2回に分けて食後40分に内服。3日で1クール、効果はあるが不十分なの場合2クール目に移行。服薬後お粥半杯~一杯摂る事を推奨。熱がない患者は石膏を減量。発熱が顕著であれば石膏増量。
軽症例
(1)寒湿鬱肺証
発熱、倦怠感、全身の疼痛、咳嗽、喀痰、息苦しさ、食思不振、悪心、嘔吐、大便が粘稠でスッキリしない 舌質淡胖歯痕あるいは淡紅、苔白厚腐膩あるいは白膩、脈濡あるいは滑
推奨処方:生麻黄6g 生石膏15g 杏仁9g 羗活15g 葶藶子15g 貫衆9g 地竜15g 徐長卿15g 藿香15g 佩蘭9g 蒼朮15g 雲苓45g 生白朮30g 焦三仙各9g 厚朴15g 焦檳榔 煨草果9g 生姜15g
上記が1日の分量。600mlの水で煎じ1日3回に分けて食前に内服。
(2)湿熱蘊肺証
微熱あるいは発熱なし、軽い悪寒、倦怠感、頭や体が重い、筋肉痛、乾性咳嗽、咽頭痛、口は乾くが飲みたがらない、あるいは胸苦しさと胃の膨満感を伴う、無汗あるいは汗がスッキリ出ない、あるいは悪心と食思不振、水様便あるいは便を出しきれない感覚 舌淡紅、苔白厚膩あるいは薄黄、脈滑数あるいは濡
推奨処方:檳榔10g 草果10g 厚朴10g 知母10g 黄芩10g 柴胡10g 赤芍10g 連翹15g 青蒿10g(後から入れる) 蒼朮10g 大青葉10g 生甘草5g
通常例
(1)湿毒鬱肺証
発熱、咳嗽と少量の痰、あるいは黄痰、息苦しく頻呼吸、腹部の張り、便秘、舌質暗紅、舌体胖、苔黄膩あるいは黄燥、脈滑数あるいは弦滑
推奨処方:生麻黄6g 苦杏仁15g 生石膏30g 生薏苡仁30g 茅蒼朮10g 広藿香15g 青蒿草12g 虎杖20g 馬鞭草30g 乾芦根30g 葶藶子15g 化橘紅15g 生甘草10g
(2)寒湿阻肺証
微熱、熱があると感じるが実際皮膚温は低い、あるいは無熱、乾性咳嗽、痰は少ない、倦怠感、胸苦しい、胃の膨満感、あるいは悪心、水様便 舌質淡あるいは淡紅、苔白あるいは白膩、脈濡
推奨処方:蒼朮15g 陳皮10g 厚朴10g 藿香10g 草果6g 生麻黄6g 羗活10g 生姜10g 檳榔10g
 
重症例
(1)疫毒閉肺証
発熱、顔面紅潮、咳嗽、痰が粘稠黄色、あるいは血混じり痰、息苦しく頻呼吸、倦怠、口が乾き苦くて粘稠、悪心、食思不振、便秘、尿量減少濃縮、舌紅、苔黄膩、脈滑数
推奨処方:生麻黄6g 杏仁9g 生石膏15g 甘草3g 藿香10g(後下) 厚朴10g 蒼朮15g 草果10g 法半夏9g 茯苓15g 生大黄5g(後下) 生黄耆10g 葶藶子10g 赤芍10g
(2)気営両燔証
高熱、口渇、息苦しく頻呼吸、うわ言、意識障害、幻視、あるいは斑疹、あるいは吐血、鼻血、あるいは四肢痙攣 舌絳少苔あるいは無苔、脈沈細数、あるいは浮大して数
推奨処方:生石膏30~60g(先に煎じる) 知母30g 生地30~60g 水牛角30g(先に煎じる) 赤芍30g 玄参30g 連翹15g 丹皮15g 黄連6g 竹葉12g 葶藶子15g 生甘草6g
推奨注射液:喜炎平注射液、血必浄注射液、熱毒寧注射液、痰熱清注射液、醒脳静注射液から1-2種類選ぶ。内服と併用可。
 
重篤例(内閉外脱証)
呼吸困難、体動激しく頻呼吸、あるいは補助換気が必要、意識障害、イライラ落ち着かない、汗は出るが四肢冷感、舌質紫暗、苔厚膩あるいは燥、脈浮大無根
推奨処方:人参15g 黒順片10g(先煎) 山茱萸15g 蘇合丸あるいは安宮牛黄丸と服用
推奨注射液:血必浄注射液、熱毒寧注射液、痰熱清注射液、醒脳静注射液、参附注射液、生脈注射液、参麦注射液から1-2種類選ぶ。内服と併用可。
重症、重篤の注射薬の推奨使用方法(使い方の翻訳は割愛)
ウイルス感染あるいは軽度細菌感染:喜炎平注射液、熱毒寧注射液、痰熱清注射液
高熱を伴う意識障害:醒脳静注射液
ARDS或いはMOF:血必浄注射液
免疫抑制:参附注射液
ショック:参附注射液
 
回復期
(1)肺脾気虚
息切れ、倦怠感、悪心食思不振、膨満感、便意はあるが出す力がない、水様便かつスッキリ感がない 舌淡胖、苔白膩
推奨処方:法半夏9g 陳皮10g 党参15g 炙黄耆30g 炒白朮10g 茯苓15g 藿香10g 砂仁6g(後下) 甘草6g
(2)気陰両虚
倦怠感、息切れ、口が乾く、水を欲しがる、動悸、発汗過多、食思不振、微熱或いは無熱、痰をあまり伴わない咳嗽 舌は乾き、脈細あるいは虚無力
推奨処方:南北沙参各10g 麦冬15g 西洋参6g 五味子6g 生石膏15g 淡竹葉10g 桑葉10g 芦根15g 丹参15g 生甘草6g 


中医学の表現は難しくきちんと翻訳できているか不安もありますが、数少ない臨床医からの翻訳としてどこかでお役に立つ事を祈っている。

2/5 中国政府が発表した「新型コロナウィルス感染関連肺炎の診療法案 第五版」で言及した治療方法
・全身管理(諸々書いてあるが一般的なものでしょう)
・呼吸状態&CT所見次第でメチルプレドニゾロン1-2mg/kg/day以下量で3−5日間使用を考慮
・「血必浄」の静脈投与 100ml ×2回/日 考慮(紅花 川芎 赤芍薬 丹参 当帰で組成された「化瘀解毒(血の滞りを取り解毒する」薬)
・腸内細菌叢調節薬の使用 
・回復期患者の血漿投与 考慮
・重篤患者では血液浄化療法考慮
⭐︎中医学治療推進
 病位は肺 病機は「湿 熱 毒 瘀」
 各地方の気候と患者と体質により、推薦された法案を参照し弁証論治せよ
↑上記のように中医学的介入を推奨している
当然最もリスクが少なく、安価で、スマートな治療は中医学治療と考えますが
弁証論治(気候 体質 徴候 舌所見や脈所見など身体所見から総合判断して治療を決める)のハードルが高いため一般医療現場では充分取り入れられないのが現実である
SARS終息に中医学の貢献が大きかったと中国政府やWHOに認められているが、この大騒乱の中、多くの中医師は初期からの関与のチャンスを与えられずにいた
とりわけ中医師が少ない湖北省では中医学の恩恵は受けにくかったようである。(2/14 中国財経網官方公表データによると、湖北省の治癒率は8%に対し、素早い中医学チームを導入した湖南省は治癒率が32%である)
それでも旧正月すぎあたりに、中国政府が組織した中医医療チームが武漢の金銀潭医院に入り、戦況に好転が見られたとのことである
中医学介入は、同じウィルス感染でも患者と場所により治療法が異なるので、画一的な処方を打ち出しにくいが
それでも大凡の傾向で考案された「清肺排毒湯」は画期的な効果を見せたと2/18中国国務院より発表された
確定の701例に対し投与 130人治癒退院 51人全身症状消失 268人全身症状改善 212人平穏 とのこと
351例詳細統計では、清肺排毒湯内服前では112例発熱あり(>37.3℃) 内服翌日に解熱した患者は51.8% 6日後までに解熱した患者は94.6% 咳嗽消失は80.6%  
内服前軽症または中等症例だった人が重症例に転化した人はなし
内服前から重症例だった22例中3例治癒退院、8例は中等症に転化したとのことである
現在新型コロナウィルス感染確定診断例で、中医学介入している例は6万107例(85.20%)である

朝、岡崎の病院に出かける夫に対し、「なんかあったら漢方で治すから〜」とケラケラ笑って送り出したけど、腕に十分自信があるわけではない。
まあそれでもおおよその事はできるつもりである。
とりあえず予防に桂枝湯を大量に持たせた(衛営調合)
试行第五版内容包括冠状病毒病原学特点、临床特点、病例定义、鉴别诊断、病例的发现与报告、治疗、解除隔离和出院标准、转运原则和医院感染控制等内容。,2020-02-05-17:02:00

1月6日より「小寒」という節気に入り

インフルエンザ患者が激増しました

人間は自然界とよく連動しています

中医学的にはどのウィルスかだなんてどうでもいいんです

ウィルスは自然界に溢れています

インフルエンザに感染して、発症しない人の方が大多数です

インフルエンザにかかる人は、
体を守る「正氣」が落ち、
寒邪の侵入を許し、
インフルエンザが体内で増えてしまう、
というのが中医学的な考えたかです

で、インフルエンザの漢方の治し方は?

と質問していただくことが多いですが、少々乱暴です

麻黄湯ですか?

と言われても、△です

寒邪が体内に侵入するには、正規ルートがあります
有名な「傷寒論」では、
寒邪が体内に侵害する段階を大雑把に分けて六つの段階に分けています
太陽 少陽 陽明 太陰 厥陰 少陰
それぞれの段階で使う薬と治療法は違います。

よく、インフルエンザに麻黄湯と脊髄反射的に処方されますが
麻黄湯や葛根湯は、寒邪が体内に侵入する最初の段階の「太陽病」のだけの薬です

注意してください

外邪には「風寒暑湿燥火」の六つがありますが
麻黄湯や葛根湯が使われるべきなのは、
寒邪の、初期段階の「太陽病」だけです。

では寒邪の初期段階とはどういうことか?

人間の寒気への第一防衛線は、足太陽膀胱経です。

目から始まり、頭を貫通し後頭部に達し、背部を下降し足まで至ります。

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寒邪がこの膀胱経に侵入すると

人間は
悪寒ゾクゾク感、後頭部痛 腰背部痛
を感じます

(あと、脈は「浮」という外に向かって拍動している感じがあります)

これが太陽病の特徴です。

インフルエンザの初日は上記の症状を感じる方が多いはずです

この段階では、寒邪はほんの体の表面に止まっているので、
追い出すのは簡単です
温めて発汗するのが全てです
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本当にこの太陽病の段階であれば、汗を軽く出して寝ればすぐ治ります

ただし、汗の出し方にもポイントがあります
⭐︎1、大量に汗をかくと、今度は正氣が傷つくので、汗はうっすら程度で止める

2、汗かいだ状態では、毛穴が開き新な邪気が侵入しやすいので、汗をかいだら絶対に風に当たらず室内でじっとしていること

以上のルールを踏まえれば、薬が手元になくたって太陽病の状態に対応できますね。足太陽膀胱経を温めて汗を出せばいいんです。方法は無限にありますね。

例えば熱湯シャワーで背中を温めるのもいいですね。岩盤浴的なので背中を温めてもいいですね。暖炉なんかあったら背中を当てればいいですね。それに加え、サンラータンなど汗を出しやすいスープを飲んでさっと汗をかいで寝ればいいんです。
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ちなみに、麻黄湯や葛根湯は、発汗に特化したお薬です
なので、もうゾクゾクした悪寒や項背部痛が無くなり、むしろ高熱で暑いと感じている患者に対して出すべき薬ではありません。

で、太陽病の次の段階でどういう風に治すかって?
そんなの書いてたら傷寒論丸写しになっちゃいます
無理です
漢方を勉強した医者に受診してください

ちなみに太陽病という、非常に治しやすいゴールデンタイムで受診する患者さんはとても少ないです
調子悪くなってから1日以上経っている人が多いので、もう悪寒項背部痛はなくなって、太陽病を通り過ぎいます

なので、麻黄湯や葛根湯は病院でもらいに行くんじゃあ、間に合わないことが多いです

お家の常備薬としましょう

背中がゾクゾクしたらすぐ飲みましょう

あ、散剤でも必ずお湯に溶かしてくださいね。薬効が全然違いますから

で、一日3袋✖️数日とか、慢性病と同じような使い方しないでくださいね

汗を早急にかくことが大事です

1包飲んで、汗でなければ30分〜1時間後に追加で1袋飲む

初日は4−5袋飲んだって構わない

で、じわっと汗が出たらやめる だらだらと何日も飲む必要はありません

「風邪の初期の麻黄湯や葛根湯」は、こういう雰囲気の薬です


ではみなさん、ゾクっと来たらまず汗を出しましょう〜♫薬なくてもいいんで!



久し振りの記事です



立冬(11/7)から立春(2/4)の三ヶ月間は冬になります。

中医学では、

大自然に対抗せず、その移り変わり、つまり「リズム」に乗ることが健康の基本と考えています。



四季がある場所で生活する人の体には自然とリズムができ

リズムがあるからこそ長生きし、より知恵も生まれ、文明も栄えると

中医学では考えられています

一年中同じような過ごし方をしてはいけないのです。

(四季のない赤道直下の国や南極北極は別ですよ)





夏は陽を養う季節でした。情熱の季節でした。

陽とは、体のパワー、エネルギー、のイメージで良いかと思います。



冬は陰を養う季節です

陰とは、とても説明しにくいですが、血液や体液や内臓、体を安定させるもの、潤滑油のイメージです

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こういう言い方がわかりやすいでしょう。

冬は、一年頑張った体を、メンテナンスする季節です。

ゆっくり「休む」ことが大事です。



冬はどのようにして過ごせばいいのか、

黄帝内經の記載を紹介します。



黄帝内經原文:

冬三月 此謂閉蔵



夏は心身を解放し、ある程度太陽に身を晒し汗をかくことが大事と以前書きました。

一方、冬の冷気と風には殺傷力があり、なるべく避けることが大事です。

冬の三ヶ月間は、

閉」と「蔵」が非常に大事です。

これに従い自然界では動物は冬眠し、植物は葉を落として春を待ちます。

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閉とは、家の窓を締め切り風を入れないことです。

昔の中国では、閉めるだけではなく、窓の隙間を糊と紙で塞いでいました。

針のような小さな穴でも、人を病気に陥れるほどの風を入れてしまいます。
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蔵とは、隠すことです。たくさん着込み、外気から体を守ることが大事です。

また、体だけではなく、心神も隠すべき時期であり、

自身の志や考えを対外アピールせず、それを整理修復しながら、淡々と過ごすことが勧められます。



冬は、自分の中をじっくりゆっくり向き合う時期なのです。





黄帝内經現文:

水氷地坼 無扰乎陽



冬は寒く、体はそれに対抗するため「陽気」を消耗する時期です

外に対抗する陽気をなるべく節約し、内臓の修復に回していくことが大事です。

これを怠れば、いわゆる風邪をひきますし、

長年続けば体のベースが損なわれます。



他の季節と違い、冬は外出を減らし、外出時は厚着をして、陽気が逃げないようにすることが大事です。



黄帝内經現文:

早臥晩起 必待日光



以前、夏は遅寝早起き、秋は早寝早起きが大事と書きましたが、

冬は陽気をなるべく消耗させないために、早寝遅起きが大事です。



早寝とは?

pm9:00-11:00は古人は「人定」と命名し寝るべき時間とされています。11:00は三焦という臓器が働く時間で、この時間までに寝ないといけません。夏の遅寝は11:00頃を指します。秋冬は、10;00までに寝ることが大事です。(大人の場合ですよ、子供はもっと早く寝ましょう)



遅起きとは?

「必待日光」と書いてあります。夜明け後、今の時期だと6:20頃以降に起きることが大事です。
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天真が保たれている子供を見ているととてもわかりやすいです

我が子も最近早くから眠くなり、夏よりは遅くまで寝るようになりました



夜明け前にランニングしている人がいます。

筋力持久力のトレーニングになるかもしれませんが、

陰を養う時間を消耗に回してしまい、

長い目で見れば健康を損なう行為です。





「冬でも寝れません

夜明け前に目を覚ましてしまいます」

という人はたくさんいます。



「閉蔵」する能力がなくなっており、陰陽失調の状態です。

車でいうとアクセルは作動するけどブレーキが壊れている状態です。



例えば、「肝火(怒り、ストレスなど)」や「心火(興奮、大きな喜び)」がある人や

「陰虚」の人はこういう状態になりやすいです。

中医学的に調節が必要です。





現代人は繁忙で、なかなか冬でも外出しないといけません。

ですが、

なるべく、意識して、ブレーキをかけることが大事です。

冬に家でぬくぬく過ごすこと、中国語で「猫冬」と言いますよ

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皆さんは秋の風をどのように感じていますか

春の風は、顔に当たっても冷たくは感じず
体内のエネルギーが風に呼び起こされ上昇していく感覚がすると思います


一方、秋風はとても涼やかで、時には冷ややかで
葉っぱを散らすように、吹き下ろされる感覚だと思います

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秋は、殺伐とした「気」を含んでいます

五行(金木水火土)では、秋は「金」に当たります
金は金属を意味し、刀や兵器をさします
秋は、昔は挙兵や死刑や狩猟の季節でした
他の季節に行うより、自然の気に従っているので
行為を行う人の気を損じないと言われています

現代に当てはめると、恋人と別れたり部下をクビにしたいなら
春に行うと、必ず自分の心身もダメージを受けます
(自分から振ったのに、かえって不眠になっちゃった人いませんか?笑)
秋に行うと、ダメージが少ないはずです

皆さん、自分を守りたいなら
離婚も左遷命令を下すのも、秋にしてください
と中医学が教えてくれています(笑)

さて、本題
秋の風

中医学では
外からやってくる病気の原因を「六淫の邪」と呼びます
   湿  

季節ごとに、問題になりやすい邪気が違います
例えば夏は、暑と湿と火が人体を犯しやすいです(熱中症のところで書きました)
秋は、「」と「」が問題となりやすいです

今回は「風の邪気」、いわゆる風邪について話します

風は六つの邪気の中ので最も人の体を犯しやすい邪気です
風が、人体の皮膚の「窓」をこじ開け体に侵入するとともに
他の邪気も一緒に連れ込むが多いです

夏は毛穴が開き、デトックスとして汗を出していた体ですが
秋が深まるにつれ風が強くなるので、
健康な人はだんだん皮膚が締まり、陽気が内臓へと収斂し、それほど汗をかかなくなります

秋になっても収斂できない人は、
毛穴が開いたままで風の邪気に侵されやすいです
(収斂できない、とは、
気虚(平たく言えばエネルギー不足)で収斂する力が足りなかったり
辛いものを好むため常に体が発散傾向のことを指します)

風呂後、飲酒後、性行後など、毛穴が開いたまま風に当たるのは中医学的には禁忌です

また、人は起きている時は「衛気」というものが体を守っています
寝ると衛気は体の中に入ってしまいます
この時、風はこっそり体の中に入りやすいので、
寝ている時に風にあまり当たりすぎないように注意が必要です

風の邪気は様々な症状を引き起こしますが
固定せず変化に富むのが特徴です
風は皮膚、血脈、臓腑を自由自在に動きます
急に皮疹が出たり、急に膝が痛くなったり、急に熱を出したり、、
何もしていないのに汗が止まらないこともあります
気がどんどん外に漏れ、元気がなくなっていきます


気虚で収斂できない人のための処方があります
「玉屏風散」
正気が不足するため、軽い体動で容易に発汗し、毛穴が開いたままで
風邪にかかりやすい人のための処方です
風と体の間に屏風を立てる、という意味のネーミングです

体表で風が侵入しやすい経路が2つあります

①後頭部と首の接合部
接合部は気血が不足しがちで侵入されやすいです

3つのツボが風の出入り口になります
風府 風池 翳風(えいふう)
072145D6-D96F-4743-932F-834A118129F8
593C5E99-BBD3-4DA0-B841-E86676A5AFE9


ここから風が侵入すると、頭痛や顔面神経麻痺、眼瞼痙攣、難聴耳鳴り、鼻づまりなどを引き起こします

秋が深まる頃は、帽子をしなくても、服が薄くても、
首をマフラーで守り風が侵入を防ぐことが大事です

②左右の肩甲骨の間
風門と、乗風いうツボが侵入口になります。
ここから風が胸腔内に侵入すると、咳やくしゃみ、蕁麻疹を引き起こします(中医学では肺は表皮を司ります)目がかゆい症状もここの症状のようです。
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よって、
背中を外に露出した服を着用するのも、風邪の原因になります

風が体内に侵入した後は、これらのツボに針灸を施し、入り口から風を駆除します
もちろん薬も使います


皆さん、
涼しいからといって、
汗だくで風邪に当たらないよう、お気をつけください






8月7日は立秋でした
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中国では、節気が変ると自然の「気」がガラッと変わると言われています。
例え同じ気温でも、立秋前日までは灼熱とした暑さだったのが、立秋の日からなんとなく爽やかになるはずです
皆さんも、8/7からの「気」の違いは感じられたでしょうか
明らかに朝夕は違いますね

秋は収穫の季節です
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中医学では、秋は養「収」が大事です

健康な人は、夏に体も心も開放的で、情熱的になっていたはずです
陽気が四肢体表に発散していたはずです

秋はその陽気を体の中へと収斂していきます
内臓に気血が徐々に充実し食欲もだんだん戻り
冬に備え、心身のリズムを調節していく必要があります

秋三月、此謂容平(黄帝内経より)
「容」とは、ゆったりした状態のことを指します(従容)
「平」とは、平和、平静な状態を意味します
春に種を植え、夏は頑張って畑を耕した後、秋の収穫の時期です。健康な人は心がゆったりと、穏やかなはずです

言い換えれば、
春はしっかり養「生」できず、心身のエネルギーが萌え出る事を逃し
夏はしっかり養「長」できず、エネルギーの成長、発散ができなければ
秋になると、もの寂しくて悲愁な気持ちになります
これは不健康な状態です
愁という漢字は、まさにこの秋の特有の感情を表しています

無理に秋に焦って頑張り始ても
自然の「気」に反しているので、
成果を得られない上に非常に健康を損じる結果になります
できるだけゆったりと心を保ち、
経験教訓をまとめ、次の自然のリズムがくるのを待ちましょう

秋はいかなる場合も心持ちを ゆったり 穏やかに保つ
が大事です
(春はワクワク、夏はイケイケ、秋はフー ですね)

悲しい気持ちになってしまった方は
「心」を補う必要があります
中国では動物薬を主に使います(血肉有情之品)
阿膠(ロバの皮)、鹿の角、スッポンの甲羅、亀板膠(亀の甲羅の煮こごり)などです

もっと簡便に
お臍でお灸をしたり(神厥というツボです)


そして、神蔵、霊墟(灵墟)、神封、の3つのツボを指圧したり
などの方法があります
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そして睡眠は、夏の「遅寝早起きから」
早臥早起、與鶏倶興(黄帝内経より)


つまり早寝早起き、鶏のようなリズムで暮らすことが勧められます

早寝とは何時ころでしょうか?

中国では21:00-23:00が「人定」と言われる時間帯で、
この時間内に寝ることが勧められます

夏は遅寝でいいので23:00まで起きていても構わないですが
秋冬は21:00ころに寝ることが勧められます

働いている皆さんは難しいと思いますがなるべく近づくよう努力することが健康維持には大事です

今日は夏の食事について話します
殆どの人は(中医学観点に)間違いを犯していると思います

夏になると、食欲が湧かなくなる人が多いです

夏になると、お腹がゆるくなる人は多いです
特に冷房下で寝た日はそうではないでしょうか
(我が家の1歳児は、内臓がまだ未熟のため、夏は毎日軟便です)

お腹に手を当ててみてください
外は暑いのに、お腹は冷えていませんか


なぜでしょうか

夏は、人の陽気が体表や四肢に発散されています
陽気とは、説明しにくいですが、いわば命をまわすエネルギー、熱、のイメージです
夏は内臓に比較的陽気が少ない時期です。内臓へのいたわりが少ない時期です
なので、機能低下で食欲も湧かないし、寒気が少しでも入ると反応し下痢になりやすいです

寒気を受けた後、体が防御反応として寒気を排出している反応が下痢です
(寒気を受けた後きちんと下痢になる人の方がましです。寒気を受けたのに下痢として出せない人の方が陰寒が蓄積しやすくのちに大病になりやすいと考えられています)

寝ている時は、冬は背中を、夏はお腹をしっかり温めないといけないと
中国では言われています

夏こそ、内臓の陽気は不足がちになるので温めておくのが大事です

なので、
夏に冷たいものを食べるのは、中医学ではタブーです
逆に陽気が内臓に集まる冬は、アイスや氷など多少食べてもダメージは少ないです

「冬吃萝卜夏吃姜,不用大夫开药方」
(冬に大根、夏に生姜を食べれば、医者いらず)
という中国の言葉があります

日本でも、夏にカレー食べたいよね!とよく言われます
これも中医学的に正しいです

また、中医栄養学では、食物を「タンパク質、脂肪、炭水化物、カロリー」などでは判断せず、その食物の自然から受けたエネルギーを重要視します

例えば、唐辛子は「熱性」が強い食物です
例え凍らせても、熱性が強いことには変わりません
(凍らせたものは物理的に胃腸を冷やすが、その後体がHOTになる)

で、
夏は水産物で胃腸炎になる人が多いです
西洋医学では腸炎ビブリオなどが原因とされますが
中医栄養学では、水産物は全て陰寒が強いです
その寒に中り胃腸炎になると言われます
なので、夏に水産物を食べる時は
1、量は少なめに
2、必ずワサビ、生姜、紫蘇など熱性が強い薬味と一緒に
3、ビールや緑茶と一緒に取らない(緑茶は温めても寒性です)
4、できれば焼いて食べる(焼くのが一番寒性を和らげる)
5、食べた後にお腹の不調を感じればすぐに生姜スープを飲む

が大事な点になります


もう一つ夏に大事な事があります
夏は大量に汗が出て、体の「陰液」(いわば潤い、栄養のような概念)が失われやすいです
なので、塩分が含まれたスープを意識して取るようにしないといけません

広東人はスープを作るのが得意です
(広東料理のスープは絶品ですよね!)
なぜなら、広東はとても暑い地方で、人の陰液が失われやすいため
昔からスープ文化が発展したからと言われます


以上夏の飲食において、中医学的大原則について書きました
夏の旬の食材についても、それぞれ語れる話は山ほどあるが、、
またおいおい

皆さん、
夏こそ、冷たいものを避けて、スープを飲んでくださいね

では、次は、夏の「心」について書こうと思います







中医学では、外部から侵入する邪気を「六淫」と呼びます

風 寒 暑 湿 燥 火 

季節ごとに侵入しやすい傾向の邪気があります
夏の邪は(=湿です。唯一の複合要素でできた邪気です。
(勿論クーラー病で風寒になるひともいます)
熱中症は中国語で中暑(暑に中る)と言います。

 という漢字から
上に日が一つ、照りつける太陽
下に日がもう一つ、太陽に焼かれた大地

大事なのは真ん中の土、五行で脾胃(中医学では食物を吸収し気と血や津液に転換する部位)に当たります
つまり暑邪の侵入は脾胃と関係が深いです


火邪が侵入すると、高熱、咽頭痛、口内炎、口渇、イライラ、痙攣、意識障害を起こします(火は心に直逹する 心は神を司る)
火を消すのは水です
飲んだ水がすぐにこの火を消せるわけではありません
飲んだ水が脾胃によって津液になります
この津液が火を消します

つまり、津液が不足し、火を消せない人が火邪に中ります
津液が不足する原因は様々ですが
最も多いのは、脾胃の機能障害です

脾胃はストレス(肝火)や食べ過ぎ(食積)でも機能障害になりますが、
そもそも寒と湿に非常に弱い臓器です
平素より清涼飲料水やビール、牛乳、冷えた緑茶などに晒されていると
脾胃はとても弱ります 
生野菜、果物もおおよそ寒性が強いです
多量摂取すると、脾胃を傷めます

つまり、熱中症を避けようと思って大量の冷えた茶やビールを飲んでいると
中医学的には、逆に脾胃を傷め熱中症にかかりやすくなります
冷えた飲み物で気持ちいいのは、舌だけです

火邪は体の中の津液をさらに消費し、一気に脱水に陥ります


湿邪が侵入すると、重だるい、体や口の中がベトベトする、苦しさ、悪心嘔吐、下痢、などの症状が出てきます
湿も水分なので火邪を消せるのではないか?
と思うかもしれませんが、できません
湿とは、一度吸収されたが、脾胃によって気血津液まで昇華できず、体に纏わりつくベトベトの使えない水分です
(「消」はできたが「化」できなかった水分)
大海原で飲めない水に囲まれているのと一緒です
湿に囲まれているが体はもっと水分を欲しがります

この湿が、脾胃を傷め、さらに湿を作ります

つまり、熱中症を避けようと思って大量の冷えた茶やビールを飲んでいると
それが湿となり脾胃を傷め、更に湿を呼び熱中症にかかりやすくなります
冷えた飲み物で気持ちいいのは、舌だけです

熱中症予防では、
高温多湿の外環境を避けるのはもちろん
日頃から脾胃をキンキン冷え冷えにしないことが大事です

特に脾胃が弱い高齢者や子供、日頃から胃腸が弱い方々は非常に熱中症にかかりやすいです。

熱中症になった時の中医学的治療戦略(詳細略)

1、火邪に出口を作ること。保冷剤で冷やすのは、火邪の体内に閉じ込めるのと一緒で、中医学的には禁忌です。アルコールなど揮発性のもので体表を拭くのはアリのようです。

2、腸や膀胱から湿と熱を瀉すること。(便や尿から火と湿をだす 滑石や生甘草を使用。急性期の大汗や下痢は湿熱をデトックスしているので絶対止めないこと。脱水あれば適切な方法で補充)

3、脾胃の機能回復させること。(藿香正気水を使用  日本漢方で使うなら、補中益気湯や六君子湯あたりか)

です。

上記、有名な中医師、徐文兵先生の著書を参考に記載してみました〜⭐️
みなさま良い夏を〜



さて暑い暑い毎日です

中医学では、自然のリズムを大事にしているとこの前言いました

四季というリズムが体の一定なリズムを作ります
体にリズムがあるからこそ、健康で豊かになります

四季がある地方で生まれ育った人の慧力も高く、豊かな文化を生みます

四季は自然がくれたありがたいリズムです

ではいかにこの夏のリズムに乗ると良いのでしょうか

注意:下記の夏の過ごし方は、比較的健康の人に適応されます。

夏の三ヶ月
夏とは、立夏の開始(今年は5/5)から立秋の開始(今年は8/7)までです
六つの節気が含まれます:
立夏 5/5〜
小満 5/21〜
芒種 6/6〜
夏至 6/21〜
小暑 7/7〜
大暑 7/23〜

古代の方々は、5日毎に、自然から明らかな小さな変化を感じ取っていました。これを「候」と呼びました
そして3つの候ごとに一つの「節気」としました
節気が変わると、自然の「気」が変わり、人の体も変化します
皆さん、今週の月曜(7/23)からなんとなく「気」が変わったのを感じましたか?

さて中医学の夏の大原則
无厭於日(太陽を嫌うな)

春は発芽の季節です。なので萌え出る志導く季節です。春は、養「生」の季節です。
それに対し夏は養「長」の季節です(成長の長)。葉っぱが夏に生い茂るように、体も気を外に発散し、情熱的に、のびのびと解放的になるべきです。
太陽を嫌がってはいけません。
もちろん照りつける太陽に長時間体を晒すことは薦められませんが、
太陽の「陽気」を受けないと発散はできません。
帽子で頭を隠して、背中(体の中の陽の部分)を太陽に適度に晒すことで、体内に蓄積した陰寒の邪気を駆除することができます。

日向ぼっこの後に、クシャミや鼻水、涙が出る人がいます
それは、体内の陰寒の邪気をデトックスしていると言われます

日向ぼっこの後にお腹がぐるぐるする人がいます
それは、受けた陽気が気血の運行を促進しているからと言われます

もちろん汗も、陰寒の邪気をデトックスしていますので
夏は適度に汗をかくべきです

クーラーがよく効いた部屋に閉じこもると、陰寒の邪気をデトックスできず、冬に病に犯されやすく、そして長年続けば陰寒の邪気が形となって体内に現れてきます(癌を含む腫瘤や痛風、リウマチなどは、中医学では陰寒が蓄積した結果とされます)


夜臥早起(遅寝早起き)

夏は陽気が体内から体表や四肢末梢に発散されます
なので健康な人はたくさん動いても疲れを感じにくい季節です
(手足に気というエネルギーがたっぷりいっているので)
少し興奮した気持ちになりがちです
よって、夏は比較的遅寝(ただし遅くても11時を超えてはいけない)
早起き(夜明けの5-6時)が薦められます。

もう一つ大事なこと
夏は午睡が非常に大事です
中医学では、「極端」を避けるべきとされます
夏の正午(子の時間 11:00-13:00)は陽気が極限に高くなった時間帯です
この時間帯で、30分から1時間の午睡を取ることで、気血が緩やかに極限帯を通過することができます
ただし、
・食後15分以上経ってから(食後すぐ寝ると消化によくない)
・できれば机に伏した状態ではなく、横になった状態で
を気をつけましょう

次は夏の飲食などについて書こうと思います(^ ^)






中医学に魅了され、
数千年前から伝承された文化とはなんと美しいものかと毎日感じています

まだまだ中医学のヒヨコ中のヒヨコですが
中医学者の著書を翻訳し皆さんに伝えることだったら私にできます

これから、自分のためにも、ちょこちょこ書いていこうと思います


どんなに偉い人でも、宇宙、大自然から見れば細菌ほどのちっぽけなものかもしれません

どんなに凄い人でも、大自然のリズム(規律、節奏)から逃れられません

そして生から死へ向かう命の線は、直線ではなく、曲折した線で、
リズムがあります

中医学とは
道教(老荘思想)から受け継いだ哲学をベースに
大自然のリズム(規律、節奏)と、人の命の軌跡を観察と感覚を通して把握し
精密詳細に記した学問です
(ただし、中国人を中心とした東洋人を観察した学問ですので、西洋人には適応しない場合があります)


同じ環境なのに、病気になる人とならない人がいます

何をしてもラッキーな人と、そうではない人がいます

自分も周囲も笑顔で心地いい雰囲気に囲まれている人もいれば
一方、仕事も家庭もギスギスしている人もいます

何が違うのか

きっと

大自然の大きいリズムに、自分の命のリズムを合わせられる人は
健康で、順調です
大自然のリズムに背く人は、体内の小さな自然に乱れてが生じて、病気になります

例えば、
植物は、春に発芽し、夏に大きく成長し、秋に実り、冬に眠ります

中医学の教えでは
人は、夏では、太陽にどんどん当たり、陽気という生命の原動力を成長させるべきで
夏こそ内臓を温める食物を摂取に陽気を養うべきです

そして冬では、「閉蔵」が大事で、
なるべく室内で、寒気に当たらず、夜はたっぷりと寝て、「隂」(体の潤いとなるもの」を養うべきです。

例えばこの自然に合わせたリズムを無視し、

夏に冷房がガンガン効いた部屋に閉じこもり、キンキンに冷えたものばかりを食べれば、
陽気が養われず、その秋冬はエネルギーがなかったり、やる気が出なかったり、寒がりになったと感じて過ごすことになります

冬に、健康のためだー!と言ってまだ暗い朝から外に走りに行ったり、寒中水泳をやったり、寝るべき夜に外で飲み歩いたりすると、「隂」が養われず、肌艶が悪くなったり、ハゲたり、不眠になったり、怒りやすくなったり、ほてりやすくなったり、夏は暑気にやられやすくなったりします。

これらを続ければそのうち形になった病気が訪れます

このように、自然との調和した生き方を詳細に教えてくれるのが、中医学かもしれません

科学的ではない、という人はいるかもしれません
中医学は、科学ではありません

幕の向こうにある「真実」を把握するために
幕に穴を開けて直接見ようとするのが科学です
「足」が見えれば、「尻尾」も見えるかもしれません
新たに開けた穴から新しいものが見えれば、主張も変わるのが科学です

中医学は、長い期間を通して、幕の向こうの影を観察し、「真実」を把握しようとする学問です。今後も観察を通して進歩することはありますが
そう簡単に変わるものではありません
中医学は、科学に反することは恐れません
ただ、「真実」に反することだけを恐れます

科学も、中医学も、互いに学び、成長すべきものです

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