中医太美

中国瀋陽市出身 名古屋大学医学部医学科卒業 安城更生病院 神経内科 現在出産後より安城市で町医者をしています 数年前より中医学に魅了され、中国の中医師の本を翻訳してブログで伝えていこうと思います

2018年07月

今日は夏の食事について話します
殆どの人は(中医学観点に)間違いを犯していると思います

夏になると、食欲が湧かなくなる人が多いです

夏になると、お腹がゆるくなる人は多いです
特に冷房下で寝た日はそうではないでしょうか
(我が家の1歳児は、内臓がまだ未熟のため、夏は毎日軟便です)

お腹に手を当ててみてください
外は暑いのに、お腹は冷えていませんか


なぜでしょうか

夏は、人の陽気が体表や四肢に発散されています
陽気とは、説明しにくいですが、いわば命をまわすエネルギー、熱、のイメージです
夏は内臓に比較的陽気が少ない時期です。内臓へのいたわりが少ない時期です
なので、機能低下で食欲も湧かないし、寒気が少しでも入ると反応し下痢になりやすいです

寒気を受けた後、体が防御反応として寒気を排出している反応が下痢です
(寒気を受けた後きちんと下痢になる人の方がましです。寒気を受けたのに下痢として出せない人の方が陰寒が蓄積しやすくのちに大病になりやすいと考えられています)

寝ている時は、冬は背中を、夏はお腹をしっかり温めないといけないと
中国では言われています

夏こそ、内臓の陽気は不足がちになるので温めておくのが大事です

なので、
夏に冷たいものを食べるのは、中医学ではタブーです
逆に陽気が内臓に集まる冬は、アイスや氷など多少食べてもダメージは少ないです

「冬吃萝卜夏吃姜,不用大夫开药方」
(冬に大根、夏に生姜を食べれば、医者いらず)
という中国の言葉があります

日本でも、夏にカレー食べたいよね!とよく言われます
これも中医学的に正しいです

また、中医栄養学では、食物を「タンパク質、脂肪、炭水化物、カロリー」などでは判断せず、その食物の自然から受けたエネルギーを重要視します

例えば、唐辛子は「熱性」が強い食物です
例え凍らせても、熱性が強いことには変わりません
(凍らせたものは物理的に胃腸を冷やすが、その後体がHOTになる)

で、
夏は水産物で胃腸炎になる人が多いです
西洋医学では腸炎ビブリオなどが原因とされますが
中医栄養学では、水産物は全て陰寒が強いです
その寒に中り胃腸炎になると言われます
なので、夏に水産物を食べる時は
1、量は少なめに
2、必ずワサビ、生姜、紫蘇など熱性が強い薬味と一緒に
3、ビールや緑茶と一緒に取らない(緑茶は温めても寒性です)
4、できれば焼いて食べる(焼くのが一番寒性を和らげる)
5、食べた後にお腹の不調を感じればすぐに生姜スープを飲む

が大事な点になります


もう一つ夏に大事な事があります
夏は大量に汗が出て、体の「陰液」(いわば潤い、栄養のような概念)が失われやすいです
なので、塩分が含まれたスープを意識して取るようにしないといけません

広東人はスープを作るのが得意です
(広東料理のスープは絶品ですよね!)
なぜなら、広東はとても暑い地方で、人の陰液が失われやすいため
昔からスープ文化が発展したからと言われます


以上夏の飲食において、中医学的大原則について書きました
夏の旬の食材についても、それぞれ語れる話は山ほどあるが、、
またおいおい

皆さん、
夏こそ、冷たいものを避けて、スープを飲んでくださいね

では、次は、夏の「心」について書こうと思います







中医学では、外部から侵入する邪気を「六淫」と呼びます

風 寒 暑 湿 燥 火 

季節ごとに侵入しやすい傾向の邪気があります
夏の邪は(=湿です。唯一の複合要素でできた邪気です。
(勿論クーラー病で風寒になるひともいます)
熱中症は中国語で中暑(暑に中る)と言います。

 という漢字から
上に日が一つ、照りつける太陽
下に日がもう一つ、太陽に焼かれた大地

大事なのは真ん中の土、五行で脾胃(中医学では食物を吸収し気と血や津液に転換する部位)に当たります
つまり暑邪の侵入は脾胃と関係が深いです


火邪が侵入すると、高熱、咽頭痛、口内炎、口渇、イライラ、痙攣、意識障害を起こします(火は心に直逹する 心は神を司る)
火を消すのは水です
飲んだ水がすぐにこの火を消せるわけではありません
飲んだ水が脾胃によって津液になります
この津液が火を消します

つまり、津液が不足し、火を消せない人が火邪に中ります
津液が不足する原因は様々ですが
最も多いのは、脾胃の機能障害です

脾胃はストレス(肝火)や食べ過ぎ(食積)でも機能障害になりますが、
そもそも寒と湿に非常に弱い臓器です
平素より清涼飲料水やビール、牛乳、冷えた緑茶などに晒されていると
脾胃はとても弱ります 
生野菜、果物もおおよそ寒性が強いです
多量摂取すると、脾胃を傷めます

つまり、熱中症を避けようと思って大量の冷えた茶やビールを飲んでいると
中医学的には、逆に脾胃を傷め熱中症にかかりやすくなります
冷えた飲み物で気持ちいいのは、舌だけです

火邪は体の中の津液をさらに消費し、一気に脱水に陥ります


湿邪が侵入すると、重だるい、体や口の中がベトベトする、苦しさ、悪心嘔吐、下痢、などの症状が出てきます
湿も水分なので火邪を消せるのではないか?
と思うかもしれませんが、できません
湿とは、一度吸収されたが、脾胃によって気血津液まで昇華できず、体に纏わりつくベトベトの使えない水分です
(「消」はできたが「化」できなかった水分)
大海原で飲めない水に囲まれているのと一緒です
湿に囲まれているが体はもっと水分を欲しがります

この湿が、脾胃を傷め、さらに湿を作ります

つまり、熱中症を避けようと思って大量の冷えた茶やビールを飲んでいると
それが湿となり脾胃を傷め、更に湿を呼び熱中症にかかりやすくなります
冷えた飲み物で気持ちいいのは、舌だけです

熱中症予防では、
高温多湿の外環境を避けるのはもちろん
日頃から脾胃をキンキン冷え冷えにしないことが大事です

特に脾胃が弱い高齢者や子供、日頃から胃腸が弱い方々は非常に熱中症にかかりやすいです。

熱中症になった時の中医学的治療戦略(詳細略)

1、火邪に出口を作ること。保冷剤で冷やすのは、火邪の体内に閉じ込めるのと一緒で、中医学的には禁忌です。アルコールなど揮発性のもので体表を拭くのはアリのようです。

2、腸や膀胱から湿と熱を瀉すること。(便や尿から火と湿をだす 滑石や生甘草を使用。急性期の大汗や下痢は湿熱をデトックスしているので絶対止めないこと。脱水あれば適切な方法で補充)

3、脾胃の機能回復させること。(藿香正気水を使用  日本漢方で使うなら、補中益気湯や六君子湯あたりか)

です。

上記、有名な中医師、徐文兵先生の著書を参考に記載してみました〜⭐️
みなさま良い夏を〜



さて暑い暑い毎日です

中医学では、自然のリズムを大事にしているとこの前言いました

四季というリズムが体の一定なリズムを作ります
体にリズムがあるからこそ、健康で豊かになります

四季がある地方で生まれ育った人の慧力も高く、豊かな文化を生みます

四季は自然がくれたありがたいリズムです

ではいかにこの夏のリズムに乗ると良いのでしょうか

注意:下記の夏の過ごし方は、比較的健康の人に適応されます。

夏の三ヶ月
夏とは、立夏の開始(今年は5/5)から立秋の開始(今年は8/7)までです
六つの節気が含まれます:
立夏 5/5〜
小満 5/21〜
芒種 6/6〜
夏至 6/21〜
小暑 7/7〜
大暑 7/23〜

古代の方々は、5日毎に、自然から明らかな小さな変化を感じ取っていました。これを「候」と呼びました
そして3つの候ごとに一つの「節気」としました
節気が変わると、自然の「気」が変わり、人の体も変化します
皆さん、今週の月曜(7/23)からなんとなく「気」が変わったのを感じましたか?

さて中医学の夏の大原則
无厭於日(太陽を嫌うな)

春は発芽の季節です。なので萌え出る志導く季節です。春は、養「生」の季節です。
それに対し夏は養「長」の季節です(成長の長)。葉っぱが夏に生い茂るように、体も気を外に発散し、情熱的に、のびのびと解放的になるべきです。
太陽を嫌がってはいけません。
もちろん照りつける太陽に長時間体を晒すことは薦められませんが、
太陽の「陽気」を受けないと発散はできません。
帽子で頭を隠して、背中(体の中の陽の部分)を太陽に適度に晒すことで、体内に蓄積した陰寒の邪気を駆除することができます。

日向ぼっこの後に、クシャミや鼻水、涙が出る人がいます
それは、体内の陰寒の邪気をデトックスしていると言われます

日向ぼっこの後にお腹がぐるぐるする人がいます
それは、受けた陽気が気血の運行を促進しているからと言われます

もちろん汗も、陰寒の邪気をデトックスしていますので
夏は適度に汗をかくべきです

クーラーがよく効いた部屋に閉じこもると、陰寒の邪気をデトックスできず、冬に病に犯されやすく、そして長年続けば陰寒の邪気が形となって体内に現れてきます(癌を含む腫瘤や痛風、リウマチなどは、中医学では陰寒が蓄積した結果とされます)


夜臥早起(遅寝早起き)

夏は陽気が体内から体表や四肢末梢に発散されます
なので健康な人はたくさん動いても疲れを感じにくい季節です
(手足に気というエネルギーがたっぷりいっているので)
少し興奮した気持ちになりがちです
よって、夏は比較的遅寝(ただし遅くても11時を超えてはいけない)
早起き(夜明けの5-6時)が薦められます。

もう一つ大事なこと
夏は午睡が非常に大事です
中医学では、「極端」を避けるべきとされます
夏の正午(子の時間 11:00-13:00)は陽気が極限に高くなった時間帯です
この時間帯で、30分から1時間の午睡を取ることで、気血が緩やかに極限帯を通過することができます
ただし、
・食後15分以上経ってから(食後すぐ寝ると消化によくない)
・できれば机に伏した状態ではなく、横になった状態で
を気をつけましょう

次は夏の飲食などについて書こうと思います(^ ^)






中医学に魅了され、
数千年前から伝承された文化とはなんと美しいものかと毎日感じています

まだまだ中医学のヒヨコ中のヒヨコですが
中医学者の著書を翻訳し皆さんに伝えることだったら私にできます

これから、自分のためにも、ちょこちょこ書いていこうと思います


どんなに偉い人でも、宇宙、大自然から見れば細菌ほどのちっぽけなものかもしれません

どんなに凄い人でも、大自然のリズム(規律、節奏)から逃れられません

そして生から死へ向かう命の線は、直線ではなく、曲折した線で、
リズムがあります

中医学とは
道教(老荘思想)から受け継いだ哲学をベースに
大自然のリズム(規律、節奏)と、人の命の軌跡を観察と感覚を通して把握し
精密詳細に記した学問です
(ただし、中国人を中心とした東洋人を観察した学問ですので、西洋人には適応しない場合があります)


同じ環境なのに、病気になる人とならない人がいます

何をしてもラッキーな人と、そうではない人がいます

自分も周囲も笑顔で心地いい雰囲気に囲まれている人もいれば
一方、仕事も家庭もギスギスしている人もいます

何が違うのか

きっと

大自然の大きいリズムに、自分の命のリズムを合わせられる人は
健康で、順調です
大自然のリズムに背く人は、体内の小さな自然に乱れてが生じて、病気になります

例えば、
植物は、春に発芽し、夏に大きく成長し、秋に実り、冬に眠ります

中医学の教えでは
人は、夏では、太陽にどんどん当たり、陽気という生命の原動力を成長させるべきで
夏こそ内臓を温める食物を摂取に陽気を養うべきです

そして冬では、「閉蔵」が大事で、
なるべく室内で、寒気に当たらず、夜はたっぷりと寝て、「隂」(体の潤いとなるもの」を養うべきです。

例えばこの自然に合わせたリズムを無視し、

夏に冷房がガンガン効いた部屋に閉じこもり、キンキンに冷えたものばかりを食べれば、
陽気が養われず、その秋冬はエネルギーがなかったり、やる気が出なかったり、寒がりになったと感じて過ごすことになります

冬に、健康のためだー!と言ってまだ暗い朝から外に走りに行ったり、寒中水泳をやったり、寝るべき夜に外で飲み歩いたりすると、「隂」が養われず、肌艶が悪くなったり、ハゲたり、不眠になったり、怒りやすくなったり、ほてりやすくなったり、夏は暑気にやられやすくなったりします。

これらを続ければそのうち形になった病気が訪れます

このように、自然との調和した生き方を詳細に教えてくれるのが、中医学かもしれません

科学的ではない、という人はいるかもしれません
中医学は、科学ではありません

幕の向こうにある「真実」を把握するために
幕に穴を開けて直接見ようとするのが科学です
「足」が見えれば、「尻尾」も見えるかもしれません
新たに開けた穴から新しいものが見えれば、主張も変わるのが科学です

中医学は、長い期間を通して、幕の向こうの影を観察し、「真実」を把握しようとする学問です。今後も観察を通して進歩することはありますが
そう簡単に変わるものではありません
中医学は、科学に反することは恐れません
ただ、「真実」に反することだけを恐れます

科学も、中医学も、互いに学び、成長すべきものです

このページのトップヘ