2/19中国が発表した新型コロナウィルス感染症 診療方案 第六版
第五版からの注目の変更点は
1,伝播経路について
経気道飛沫感染は変わらないが
「接触感染」から「密接接触」と記載を変更している。長時間密閉空間でのエアロゾル感染を追加している。
2、抗ウィルス薬について
第5版では「確実に有効と認められる抗ウィルス薬はない」と記載されていたが、第6版では抗マラリア薬のChloroquine Phosphate(成人500mg×2回/日 10日以内使用)と、抗インフルエンザウイルス剤のfavipiravir(成人200mg×3回 10日以内使用)が追加されている
Interferon alfa(500万U噴霧吸入 2回/日)
エイズ治療薬Lopinavir/ritonavir (LPV/r)(200mg/50mg/粒 2粒×2回/日 10日以内投与)
抗ウィルス薬Ribavirin 500mg/回 2-3回/日静注投与 10日以内使用(上記のInterferon alfa或いはLopinavir/ritonavir 併用を推奨)
ただし上記薬剤の3種類以上併用を薦めない 



3、中医治療
第五版から第六版へは非常に内容が充実し、中医学を多少かじった医師にも判断しやすいよう細かい指示が盛り込まれている
第六版治療編の7ページ中4ページ以上において中医学的対応を記載されているが、他国言語に適切に翻訳しにくいためか日本に情報がほとんどない。触れられてすらいない。
生薬処方は日本で保険適応であり(保険適応外の生薬は指示欄に別で記載すれば入れられる)生薬を保険調剤する薬局は実は各所にあるので活用していっていただければ幸いである。煎じ方は大方扱っている薬剤師に聞けばわかるはずである。
1医学観察期
臨床表現1 :倦怠感+胃腸症状(主に悪心や下痢を指すと思われる)
推薦処方:藿香正気散(散ではない丸薬でも水薬でも良い)こちらは第二類のみ日本でも売られている。
臨床表現2:倦怠感+発熱
推薦処方:金花清感顆粒 連花清瘟カプセル(顆粒) 疎風解毒カプセル(顆粒) 
上記は中国では一般の薬局で手に入りやすいが、日本ではなかなか手に入らない。個人的にはの本でも売られている銀ぎょう解毒散(第2類)でも代用可能と考えている。
2臨床治療期 以下は売られている散剤ではなく生薬になる
清肺排毒湯(適用範囲:軽症、通常型、重症、重篤の患者には状況に合わせて使用)
基本方剤:麻黄9g 炙甘草6g 杏仁9g 生石膏15~30g(先に煎じる) 桂枝9g 沢瀉9g 猪苓9g 白朮9g 茯苓15g 柴胡16g 黄芩6g 姜半夏9g 生姜9g 紫苑9g 冬花9g 射干9g 細辛6g 山薬12g 枳実6g 陳皮6g 藿香9g
上記が一日の分量 水で煎じ(通常600mlの水で弱火で300mlになるまで煎じる)2回に分けて食後40分に内服。3日で1クール、効果はあるが不十分なの場合2クール目に移行。服薬後お粥半杯~一杯摂る事を推奨。熱がない患者は石膏を減量。発熱が顕著であれば石膏増量。
軽症例
(1)寒湿鬱肺証
発熱、倦怠感、全身の疼痛、咳嗽、喀痰、息苦しさ、食思不振、悪心、嘔吐、大便が粘稠でスッキリしない 舌質淡胖歯痕あるいは淡紅、苔白厚腐膩あるいは白膩、脈濡あるいは滑
推奨処方:生麻黄6g 生石膏15g 杏仁9g 羗活15g 葶藶子15g 貫衆9g 地竜15g 徐長卿15g 藿香15g 佩蘭9g 蒼朮15g 雲苓45g 生白朮30g 焦三仙各9g 厚朴15g 焦檳榔 煨草果9g 生姜15g
上記が1日の分量。600mlの水で煎じ1日3回に分けて食前に内服。
(2)湿熱蘊肺証
微熱あるいは発熱なし、軽い悪寒、倦怠感、頭や体が重い、筋肉痛、乾性咳嗽、咽頭痛、口は乾くが飲みたがらない、あるいは胸苦しさと胃の膨満感を伴う、無汗あるいは汗がスッキリ出ない、あるいは悪心と食思不振、水様便あるいは便を出しきれない感覚 舌淡紅、苔白厚膩あるいは薄黄、脈滑数あるいは濡
推奨処方:檳榔10g 草果10g 厚朴10g 知母10g 黄芩10g 柴胡10g 赤芍10g 連翹15g 青蒿10g(後から入れる) 蒼朮10g 大青葉10g 生甘草5g
通常例
(1)湿毒鬱肺証
発熱、咳嗽と少量の痰、あるいは黄痰、息苦しく頻呼吸、腹部の張り、便秘、舌質暗紅、舌体胖、苔黄膩あるいは黄燥、脈滑数あるいは弦滑
推奨処方:生麻黄6g 苦杏仁15g 生石膏30g 生薏苡仁30g 茅蒼朮10g 広藿香15g 青蒿草12g 虎杖20g 馬鞭草30g 乾芦根30g 葶藶子15g 化橘紅15g 生甘草10g
(2)寒湿阻肺証
微熱、熱があると感じるが実際皮膚温は低い、あるいは無熱、乾性咳嗽、痰は少ない、倦怠感、胸苦しい、胃の膨満感、あるいは悪心、水様便 舌質淡あるいは淡紅、苔白あるいは白膩、脈濡
推奨処方:蒼朮15g 陳皮10g 厚朴10g 藿香10g 草果6g 生麻黄6g 羗活10g 生姜10g 檳榔10g
 
重症例
(1)疫毒閉肺証
発熱、顔面紅潮、咳嗽、痰が粘稠黄色、あるいは血混じり痰、息苦しく頻呼吸、倦怠、口が乾き苦くて粘稠、悪心、食思不振、便秘、尿量減少濃縮、舌紅、苔黄膩、脈滑数
推奨処方:生麻黄6g 杏仁9g 生石膏15g 甘草3g 藿香10g(後下) 厚朴10g 蒼朮15g 草果10g 法半夏9g 茯苓15g 生大黄5g(後下) 生黄耆10g 葶藶子10g 赤芍10g
(2)気営両燔証
高熱、口渇、息苦しく頻呼吸、うわ言、意識障害、幻視、あるいは斑疹、あるいは吐血、鼻血、あるいは四肢痙攣 舌絳少苔あるいは無苔、脈沈細数、あるいは浮大して数
推奨処方:生石膏30~60g(先に煎じる) 知母30g 生地30~60g 水牛角30g(先に煎じる) 赤芍30g 玄参30g 連翹15g 丹皮15g 黄連6g 竹葉12g 葶藶子15g 生甘草6g
推奨注射液:喜炎平注射液、血必浄注射液、熱毒寧注射液、痰熱清注射液、醒脳静注射液から1-2種類選ぶ。内服と併用可。
 
重篤例(内閉外脱証)
呼吸困難、体動激しく頻呼吸、あるいは補助換気が必要、意識障害、イライラ落ち着かない、汗は出るが四肢冷感、舌質紫暗、苔厚膩あるいは燥、脈浮大無根
推奨処方:人参15g 黒順片10g(先煎) 山茱萸15g 蘇合丸あるいは安宮牛黄丸と服用
推奨注射液:血必浄注射液、熱毒寧注射液、痰熱清注射液、醒脳静注射液、参附注射液、生脈注射液、参麦注射液から1-2種類選ぶ。内服と併用可。
重症、重篤の注射薬の推奨使用方法(使い方の翻訳は割愛)
ウイルス感染あるいは軽度細菌感染:喜炎平注射液、熱毒寧注射液、痰熱清注射液
高熱を伴う意識障害:醒脳静注射液
ARDS或いはMOF:血必浄注射液
免疫抑制:参附注射液
ショック:参附注射液
 
回復期
(1)肺脾気虚
息切れ、倦怠感、悪心食思不振、膨満感、便意はあるが出す力がない、水様便かつスッキリ感がない 舌淡胖、苔白膩
推奨処方:法半夏9g 陳皮10g 党参15g 炙黄耆30g 炒白朮10g 茯苓15g 藿香10g 砂仁6g(後下) 甘草6g
(2)気陰両虚
倦怠感、息切れ、口が乾く、水を欲しがる、動悸、発汗過多、食思不振、微熱或いは無熱、痰をあまり伴わない咳嗽 舌は乾き、脈細あるいは虚無力
推奨処方:南北沙参各10g 麦冬15g 西洋参6g 五味子6g 生石膏15g 淡竹葉10g 桑葉10g 芦根15g 丹参15g 生甘草6g 


中医学の表現は難しくきちんと翻訳できているか不安もありますが、数少ない臨床医からの翻訳としてどこかでお役に立つ事を祈っている。