中医太美

中国瀋陽市出身 名古屋大学医学部医学科卒業 安城更生病院 神経内科 現在出産後より安城市で町医者をしています 数年前より中医学に魅了され、中国の中医師の本を翻訳してブログで伝えていこうと思います

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1月6日より「小寒」という節気に入り

インフルエンザ患者が激増しました

人間は自然界とよく連動しています

中医学的にはどのウィルスかだなんてどうでもいいんです

ウィルスは自然界に溢れています

インフルエンザに感染して、発症しない人の方が大多数です

インフルエンザにかかる人は、
体を守る「正氣」が落ち、
寒邪の侵入を許し、
インフルエンザが体内で増えてしまう、
というのが中医学的な考えたかです

で、インフルエンザの漢方の治し方は?

と質問していただくことが多いですが、少々乱暴です

麻黄湯ですか?

と言われても、△です

寒邪が体内に侵入するには、正規ルートがあります
有名な「傷寒論」では、
寒邪が体内に侵害する段階を大雑把に分けて六つの段階に分けています
太陽 少陽 陽明 太陰 厥陰 少陰
それぞれの段階で使う薬と治療法は違います。

よく、インフルエンザに麻黄湯と脊髄反射的に処方されますが
麻黄湯や葛根湯は、寒邪が体内に侵入する最初の段階の「太陽病」のだけの薬です

注意してください

外邪には「風寒暑湿燥火」の六つがありますが
麻黄湯や葛根湯が使われるべきなのは、
寒邪の、初期段階の「太陽病」だけです。

では寒邪の初期段階とはどういうことか?

人間の寒気への第一防衛線は、足太陽膀胱経です。

目から始まり、頭を貫通し後頭部に達し、背部を下降し足まで至ります。

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寒邪がこの膀胱経に侵入すると

人間は
悪寒ゾクゾク感、後頭部痛 腰背部痛
を感じます

(あと、脈は「浮」という外に向かって拍動している感じがあります)

これが太陽病の特徴です。

インフルエンザの初日は上記の症状を感じる方が多いはずです

この段階では、寒邪はほんの体の表面に止まっているので、
追い出すのは簡単です
温めて発汗するのが全てです
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本当にこの太陽病の段階であれば、汗を軽く出して寝ればすぐ治ります

ただし、汗の出し方にもポイントがあります
⭐︎1、大量に汗をかくと、今度は正氣が傷つくので、汗はうっすら程度で止める

2、汗かいだ状態では、毛穴が開き新な邪気が侵入しやすいので、汗をかいだら絶対に風に当たらず室内でじっとしていること

以上のルールを踏まえれば、薬が手元になくたって太陽病の状態に対応できますね。足太陽膀胱経を温めて汗を出せばいいんです。方法は無限にありますね。

例えば熱湯シャワーで背中を温めるのもいいですね。岩盤浴的なので背中を温めてもいいですね。暖炉なんかあったら背中を当てればいいですね。それに加え、サンラータンなど汗を出しやすいスープを飲んでさっと汗をかいで寝ればいいんです。
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ちなみに、麻黄湯や葛根湯は、発汗に特化したお薬です
なので、もうゾクゾクした悪寒や項背部痛が無くなり、むしろ高熱で暑いと感じている患者に対して出すべき薬ではありません。

で、太陽病の次の段階でどういう風に治すかって?
そんなの書いてたら傷寒論丸写しになっちゃいます
無理です
漢方を勉強した医者に受診してください

ちなみに太陽病という、非常に治しやすいゴールデンタイムで受診する患者さんはとても少ないです
調子悪くなってから1日以上経っている人が多いので、もう悪寒項背部痛はなくなって、太陽病を通り過ぎいます

なので、麻黄湯や葛根湯は病院でもらいに行くんじゃあ、間に合わないことが多いです

お家の常備薬としましょう

背中がゾクゾクしたらすぐ飲みましょう

あ、散剤でも必ずお湯に溶かしてくださいね。薬効が全然違いますから

で、一日3袋✖️数日とか、慢性病と同じような使い方しないでくださいね

汗を早急にかくことが大事です

1包飲んで、汗でなければ30分〜1時間後に追加で1袋飲む

初日は4−5袋飲んだって構わない

で、じわっと汗が出たらやめる だらだらと何日も飲む必要はありません

「風邪の初期の麻黄湯や葛根湯」は、こういう雰囲気の薬です


ではみなさん、ゾクっと来たらまず汗を出しましょう〜♫薬なくてもいいんで!



久し振りの記事です



立冬(11/7)から立春(2/4)の三ヶ月間は冬になります。

中医学では、

大自然に対抗せず、その移り変わり、つまり「リズム」に乗ることが健康の基本と考えています。



四季がある場所で生活する人の体には自然とリズムができ

リズムがあるからこそ長生きし、より知恵も生まれ、文明も栄えると

中医学では考えられています

一年中同じような過ごし方をしてはいけないのです。

(四季のない赤道直下の国や南極北極は別ですよ)





夏は陽を養う季節でした。情熱の季節でした。

陽とは、体のパワー、エネルギー、のイメージで良いかと思います。



冬は陰を養う季節です

陰とは、とても説明しにくいですが、血液や体液や内臓、体を安定させるもの、潤滑油のイメージです

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こういう言い方がわかりやすいでしょう。

冬は、一年頑張った体を、メンテナンスする季節です。

ゆっくり「休む」ことが大事です。



冬はどのようにして過ごせばいいのか、

黄帝内經の記載を紹介します。



黄帝内經原文:

冬三月 此謂閉蔵



夏は心身を解放し、ある程度太陽に身を晒し汗をかくことが大事と以前書きました。

一方、冬の冷気と風には殺傷力があり、なるべく避けることが大事です。

冬の三ヶ月間は、

閉」と「蔵」が非常に大事です。

これに従い自然界では動物は冬眠し、植物は葉を落として春を待ちます。

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閉とは、家の窓を締め切り風を入れないことです。

昔の中国では、閉めるだけではなく、窓の隙間を糊と紙で塞いでいました。

針のような小さな穴でも、人を病気に陥れるほどの風を入れてしまいます。
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蔵とは、隠すことです。たくさん着込み、外気から体を守ることが大事です。

また、体だけではなく、心神も隠すべき時期であり、

自身の志や考えを対外アピールせず、それを整理修復しながら、淡々と過ごすことが勧められます。



冬は、自分の中をじっくりゆっくり向き合う時期なのです。





黄帝内經現文:

水氷地坼 無扰乎陽



冬は寒く、体はそれに対抗するため「陽気」を消耗する時期です

外に対抗する陽気をなるべく節約し、内臓の修復に回していくことが大事です。

これを怠れば、いわゆる風邪をひきますし、

長年続けば体のベースが損なわれます。



他の季節と違い、冬は外出を減らし、外出時は厚着をして、陽気が逃げないようにすることが大事です。



黄帝内經現文:

早臥晩起 必待日光



以前、夏は遅寝早起き、秋は早寝早起きが大事と書きましたが、

冬は陽気をなるべく消耗させないために、早寝遅起きが大事です。



早寝とは?

pm9:00-11:00は古人は「人定」と命名し寝るべき時間とされています。11:00は三焦という臓器が働く時間で、この時間までに寝ないといけません。夏の遅寝は11:00頃を指します。秋冬は、10;00までに寝ることが大事です。(大人の場合ですよ、子供はもっと早く寝ましょう)



遅起きとは?

「必待日光」と書いてあります。夜明け後、今の時期だと6:20頃以降に起きることが大事です。
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天真が保たれている子供を見ているととてもわかりやすいです

我が子も最近早くから眠くなり、夏よりは遅くまで寝るようになりました



夜明け前にランニングしている人がいます。

筋力持久力のトレーニングになるかもしれませんが、

陰を養う時間を消耗に回してしまい、

長い目で見れば健康を損なう行為です。





「冬でも寝れません

夜明け前に目を覚ましてしまいます」

という人はたくさんいます。



「閉蔵」する能力がなくなっており、陰陽失調の状態です。

車でいうとアクセルは作動するけどブレーキが壊れている状態です。



例えば、「肝火(怒り、ストレスなど)」や「心火(興奮、大きな喜び)」がある人や

「陰虚」の人はこういう状態になりやすいです。

中医学的に調節が必要です。





現代人は繁忙で、なかなか冬でも外出しないといけません。

ですが、

なるべく、意識して、ブレーキをかけることが大事です。

冬に家でぬくぬく過ごすこと、中国語で「猫冬」と言いますよ

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